臨床工学技士になるか看護師になるかを悩んでいます。どっちがいいですか?

レナ

進路について相談させてください。
私は医療系の職種を希望していて、臨床工学技士看護師、どちらかになりたいと思っています。
両親は将来結婚して仕事を離れても看護師なら働く先が多いから再就職がすぐにできると言うし、
担任の先生は医療系なら看護師でしょう。
と、すすめてきます。

でも私は臨床工学技士に興味があります。
看護の道は、なんとなく違うと感じていて今は臨床工学技士に興味があります。

仕事内容は違うようですが具体的にどう違うか教えてください。

やはり、就職や結婚のことを考えると看護師のほうがいいのでしょうか・・・。

今回、ご紹介するお悩みは将来医療系の職種につくことを考えている女子高生レナさんからのご相談です。

今回はナースボックスを運営している現役看護師のにしいしずかと、元臨床工学技士のにしいのび太がお答えします!

現状や資格の違いなども徹底解説していますので、少しでもお役に立つことができれば幸いです。

 

ナースボックスからの回答

にしいしずか

レナさんこんにちは。
看護師と臨床工学技士、どっちがいいか、ということですが、私はレナさんが臨床工学技士がいいと思うならその道を進むのもいいと思いますよ!

ただ、これだけでは、せっかくお悩みを相談してくれたのに、あっけないですよね。
実はこのサイトの運営者のにしいのび太は元臨床工学技士です。10年以上臨床を経験しての意見ですので、参考になれば幸いです。

まずはにしいのび太の意見を聞いてみましょう!

 

にしいのび太

レナさんこんにちは!
臨床工学技士看護師、悩みますよね!
僕はもともと看護師志望だったんですが、臨床工学技士(ME)の学校(昼間部4年制)へ進みました。
男性が多いということを聞いて、軽い気持ちでMEの道へすすみましたが、正直、考えが甘かったかなと感じた時期もあります。

結論を先にいうと、臨床工学技士の業務に魅力を感じているのなら臨床工学技士はアリです!

考えが甘かったという部分については後ほどお答えします。

まず、求人や、再就職に関して。
こちらは全然気にしなくていいです。
ブランクがあると入りにくい病院があるのは確かですが、透析クリニックでの求人はたくさんありますね。
求人は看護師の求人より少ないですが、そもそも、絶対的な人数が違いますし、看護師求人と同様にMEも“選ばなければどこでも就職できる”状態です。

では、なぜ僕は自分の考えが甘かったと感じたのか。

まず1つ、臨床工学技士は業務独占がなかったことです。
つまり、臨床工学技士にしか認められない業務というものは無いということです。

もう一つはお給料について。
これは、働き始めてわかったことですが、看護師よりも遥かに安いお給料でした。

ただ、僕が10年間臨床工学技士として働けた理由は、とても楽しかったからです。
今では看護師を目指さなかったことを全く後悔していません。
学校では医療機器や臨床工学技士に関わる業務について集中的に学べますし、就職してからも男女比は圧倒的に男が多い職種で、人間関係の面においてはとても恵まれていましたと感じます。

人工透析や人工心肺、心臓カテーテル、医療機器などに興味があるのなら臨床工学技士はとても楽しい仕事ですので目指してもいいと思います!

もし、なんとなく医療系のしごと、、、と漠然としたイメージでおられるようでしたら看護師の道に進むことをおすすめします。

にしいしずか

私は看護師だとおもいます。

理由は、まだMEさんは男の世界。私が働く病院での男女比は3:1くらい。(約30名の臨床工学技士が働いています。)
病院によっては男女比10:1以下のところもありますので女性が働きやすい環境であるかという部分では判断が難しいですよね。

また病院によっては看護師しか利用できない福利厚生などもあります。(託児所や手当も含めて)

MEさんは透析しか業務がなかったり、少し分野が狭いと感じます。

ただ、その分野に関しては特化していて、医師よりも特定の分野に関しては詳しい方や勉強会などもよく開いてくれるので、とても頼りになる存在です。

現実的な部分ですと、透析室など業務内容は同じ部分が多いのに、お給料は看護師のほうが高額です。

心カテやオペでは患者様のケアじゃなくて先生やその手技に取り組むので、そういった部分では看護師と違った面白さがあると思います。

あとは、看護師になったあとでも、臨床工学技士を目指したいと思ったときに専攻科のある養成校に通えば最短1年で臨床工学技士免許を取得できるので、私は看護師を目指すことをおすすめします!

 

どう違う!?看護師の業務独占資格、臨床工学技士の名称独占資格。

病院には国家資格を持つ医師、薬剤師、看護師、診療放射線技師、臨床工学技士などが働いていますよね。
そんな国家資格で溢れた医療業界ですが、資格によって違いがあります。
今回ご説明するのは、看護師と臨床工学技士の資格の違いについてです。

これから目指すのであれば、最低限これだけは知っておいたほうがいいかもしれませんよ!

資格が無いと出来ない仕事があるの?看護師の業務独占資格ってなに?

看護師は、国家資格の種類でいうと業務独占資格と定められています。

業務独占資格を持つ医療系の国家資格の代表は医師、歯科医師、薬剤師、看護師、診療放射線技師などがあります。

業務独占資格とは?

業務独占資格では、該当する国家資格を持っている人だけが、独占的にその業務を行えるというものです。

看護師の場合は保健師助産師看護師法の第5条に定められるている、
傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助
これを「看護」といい、この部分が業務独占の部分となります。
他の職種や看護師でない場合は、看護業務を行うことを禁止されています。(参考:保健師助産師看護師法第5,31,32条)

保健師助産師看護師法(第5条,31条,32条抜粋)
第五条 この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。
第三十一条 看護師でない者は、第五条に規定する業をしてはならない。ただし、医師法又は歯科医師法(昭和二十三年法律第二百二号)の規定に基づいて行う場合は、この限りでない。
2 保健師及び助産師は、前項の規定にかかわらず、第五条に規定する業を行うことができる。
第三十二条 准看護師でない者は、第六条に規定する業をしてはならない。ただし、医師法又は歯科医師法の規定に基づいて行う場合は、この限りでない。(参照元:保健師助産師看護師法第5,31,32条)

無資格で「看護」業務をした場合どうなるの?

看護師の免許を持っていないのに、看護業務を行った場合は保健師助産師看護師法の規定により罰則があります。

先程ご紹介した31条にもあったように、看護師でない人は、「看護」をしてはいけません。(助産師・保健師は看護師免許を取得しているのでOK)

違反した場合は、2年以下の懲役、または50万円以下の罰金となります。
さらに、看護師ではないにもかかわらず、紛らわしい名称を名乗っていた場合には2年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金となります。(参考:保健師助産師看護師法第43条)

保健師助産師看護師法(第43条抜粋)
第四十三条 次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の懲役若しくは五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第二十九条から第三十二条までの規定に違反した者
二 虚偽又は不正の事実に基づいて免許を受けた者
2 前項第一号の罪を犯した者が、助産師、看護師、准看護師又はこれに類似した名称を用いたものであるときは、二年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。(参照元:保健師助産師看護師法第43条)

臨床工学技士は名称独占資格!看護師の業務独占との違いは?

看護師が『業務独占資格』という分類の国家資格であるとお話しましたね。
臨床工学技士は『名称独占資格』という分類になります。

名称独占資格とは?

名称独占資格の国家資格、例として臨床工学技士の場合は、資格を持っていない人は臨床工学技士と名乗ることができません。さらに、紛らわしい名称を名乗ることも禁止されています。

この部分が“名称独占資格”の由縁です。

業務独占資格でも、無資格の人がその名称(紛らわしいものを含む)を名乗ることは禁止されています。

看護師と比べると臨床工学技士の資格はどう違うの?

何が違うかというと、
看護師は臨床工学技士の業務をできるけど、臨床工学技士は看護師の業務をできない。

ということです。

もう少し細かく言うと、
看護師は診療の補助という名目で様々な看護の業務ができますが、臨床工学技士は診療の補助の中でも、生命維持管理装置の操作(人工心肺、人工呼吸器、透析装置の操作など)に限られています。(参考:臨床工学技士法 第37条)

臨床工学技士法 (第37条抜粋)
第三十七条 臨床工学技士は、保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)第三十一条第一項及び第三十二条の規定にかかわらず、診療の補助として生命維持管理装置の操作を行うことを業とすることができる。

臨床工学技士は”最短1年”で取得可能!

ここまで、資格の違いをご説明しましたが、

臨床工学技士という資格は最短で1年で取得することができます。

それが”専攻科”の存在です。

臨床工学技士になるためには、昼間部3年制、昼間部4年制、夜間部4年制、専攻科(昼間1年制)などの学科があります。

専攻科(昼間部1年制)

こちらに注目。

受験資格さえ満たしていれば、臨床工学技士は1年で取得できてしまいます。

※専攻科廃止論もあるようですが、2019年現在、専攻科は継続しています。

専攻科の受験資格
下記1と2両方の条件をすべて満たしていることが必要です。

  1. 4年制大学短期大学看護師、診療放射線技師・臨床検査技師・理学療法士・作業療法士・視能訓練士・義肢装具士の養成所において2年、または高等専門学校において5年以上修業していること。
  2. 厚生労働大臣の指定する下記の科目を履修していること。
    1. 人文科学のうち2科目
    2. 社会科学のうち2科目
    3. 自然科学のうち2科目
    4. 外国語
    5. 保健体育
    6. 公衆衛生学・解剖学・生理学・病理学・生化学・免疫学・看護学概論・保健技術学・応用数学・医用工学概論・システム工学・情報処理工学・電気工学・ 電子工学・物性工学・材料工学・計測工学・機械工学・放射線工学概論・臨床医学概論・内科診断学のうち8科目

(大阪ハイテクノロジー専門学校:専攻科の受験資格の確認について より引用)

看護師の養成校に通っていれば、臨床工学技士の専攻科の入学資格あり!

看護師の国家試験をクリアしていれば、上記の資格はほぼ間違いなく満たしています。

仮に、看護学校の在学中だったとしても、履修した科目が条件をクリアしていれば、臨床工学技士の専攻科に通うことも可能ですね。

看護師には専攻科も、夜間部もない。

看護師には専攻科や夜間部はありません。(※准看護師が看護師になる場合にはあります)

ナースの先輩に聞いた話ですが、看護師のレベル低下を防ぐために全日制以外なくなったようです。

臨床工学技士から看護師の国家資格取得を目指す場合、どれくらいかかるでしょうか。

臨床工学技士養成校看護師養成校合計年数
最低3年(全日制)最低3年(全日制)6年

どちらの資格も取得すると考えた場合、臨床工学技士+看護師最低でも6年かかります。
18歳で臨床工学技士の養成校に入ったとして、2つの国家資格をとるのに最短で6年なので24歳になってしまいますね。

では逆に看護師の資格を取得後にから臨床工学技士を目指す場合どうなるでしょうか。

看護師養成校臨床工学技士養成校合計年数
最低3年(全日制)最低1年(専攻科)4年

臨床工学技士の専攻科への条件を満たすことができるので、看護師+臨床工学技士なら最短で4年でどちらの資格も取得できます!

そう考えると、臨床工学技士か看護師で迷うなら看護師を先に目指すほうが方向転換が利くかもしれませんね。

看護師免許と臨床工学技士免許、ダブルライセンスでどうなる?

看護師免許と臨床工学技士免許をもっているからといって、両方の業務を任されることは稀です。

また、お給料に関しても、ダブルライセンスだから高額な給与をもらえる。ということも少ないです。

看護師で採用されれば、看護師の給与形態となり、臨床工学技士として採用された場合は臨床工学技士の給与形態で採用されます。

ただし、病院にとっては高度な知識とスキルを持った人材として重宝されます。

もしかしたら、昇進には有利に働くかもしれませんね!

臨床工学技士は看護師の下位互換ではない!

ここまでお話をすると、臨床工学技士って看護師の下位互換に感じてしまいますよね。

でも、そういうわけではありません。

看護師を始めとするコメディカル(パラメディック)はそれぞれに病院内で役割がありますよね。

看護師は臨床工学技士の仕事を行うことはできますが、養成校でも人工呼吸器の設定や人工心肺を始めとした生命維持管理装置のことはほとんど習いません。(表面的な部分までです。)

一方、臨床工学技士は養成校で、生命維持管理装置のことも深く学びますし、電子工学や物理学、生体材料工学など、医学系の分野に加え工学系の分野を集中的に学びます。

病院内で”MEさんはマニアック”とよく言われます。それは、看護師さんが深く知らない生命維持管理装置や医療機器の深い部分まで知っている(学んでいる)ということが理由に挙げられます。

資格を表面的に見比べると看護師の下位互換のような扱いにも見えますが、病院内では上下関係は少なく、お互いに信頼し合う存在といえます。

もちろん、他の職種に関しても同じですよ!

コメディカル(パラメディック)とは
コ・メディカル(co-medical)は和製英語で、医師や歯科医師の指示のもと働く医療従事者のことを言います。看護師や臨床工学技士だけでなく、薬剤師、診療放射線技師、作業療法士、理学療法士など、幅広い医療従事者の総称です。英語ではパラメディック(paramedic)と呼ばれています。 

コメディカルの中で看護師はジェネラリスト!臨床工学技士はスペシャリスト!

看護師という職は一般的にみると、医療系の『看護』を極めたスペシャリストって感じがしますよね。

実際に医療系も一般職も含めて見るとスペシャリストだと思います。

しかし、病院内での役割に焦点を当てると看護師は概ね『ジェネラリスト』になります。

もちろん、特定の分野を極めた『スペシャリスト』な看護師さんもたくさんおられます。

看護師はなぜ『ジェネラリスト』なの?

看護師は『看護』という分野において、幅広い疾患に対しての患者ケアがあります。

業務でみても、疾患ごとに病棟がわけられていて、外来勤務やオペ室での勤務もあります。

そして、総合病院などでは、いろいろな病棟、部署を経験しないといけません。

また、患者様の疾患だけでなく、性別、年齢、によって必要な知識も対応も違ってきますよね。

例えば心筋梗塞といっても背景には高血圧、脂質異常症、糖尿病などがあります。
もちろん、診断するのは医師ですが、治療の補助や、指示を受けてケア(看護)するのは看護師ですね。

心臓の病気だから心臓の疾患だけの知識が必要というわけではなく、既往歴や高血圧などの基礎疾患に対しての知識、理解も必要になります。

つまり、医療という専門性がありながら、幅広い疾患の分野に対応できるスキルが看護師には求められています。

ジェネラリストとは?
ジェネラリストとは、ジェネラル(General)、”全般の”や”総合”といった意味のある単語から来ています。
つまり、特定の分野のみでなく総合的なスキルを持つ人をジェネラリストと呼びます。

臨床工学技士は『スペシャリスト』

ジェネラリストである看護師に対し、その他のコメディカルの殆どがスペシャリストと呼ばれます。

臨床工学技士も例外ではなく、病院内での役割は生命維持管理装置の操作や管理・透析室・機械室・心臓カテーテル室などでの勤務が一般的ですが、その分野に関してはコメディカルの中では誰よりも詳しく、特化していると言えます。

例えば、臨床工学技士が常駐している病院なら医療機器のトラブル時に真っ先に頼られるのが臨床工学技士です。

医師や看護師は医療機器の基本的な設定や使用はできますが、トラブルにはめっぽう弱く、日常から機器の管理をしている臨床工学技士の出番となります。

そういったときに頼りにされる臨床工学技士はとてもカッコいい仕事です!

他にも、人工心肺の操作では、医師の指示のもと完璧な操作が要求されます。
看護師も人工心肺の操作ができないわけではありませんが、法的に問題ないものの、そういった操作などは学校では学びませんし、その部分を極めている看護師もほとんどいないでしょう。

一方、臨床工学技士の養成校では、学校内の実習室で実際に人工心肺の操作を経験できる施設もありますし、しっかりと深い部分まで学びます。

このように、養成校の段階で臨床工学技士はスペシャリストとしての英才教育を受けることになります。

スペシャリストとは
特定の分野に特化した専門知識を持つ人のことをスペシャリストといいます。
臨床工学技士は、生命維持管理装置だけでなく医療機器だけでなくや心臓、腎臓などの循環器系のスペシャリストといえますね。

お給料は看護師のほうが多い場合が圧倒的に多い!

一部の透析クリニックなどを除き、お給料の面からいうと、看護師のほうが圧倒的にお給料が高いです。

下世話な話ですが、にしいしずかとのび太は同じ病院出身です。

当時の初任給のリアルな数字をいうと、

臨床工学技士ののび太の初任給(基本給)は186,000円でした。

一方看護師であるしずかの初任給(基本給)は215,000円でした。

臨床工学技士で基本給215,000円になるには当時の職場だと、6年から7年目にやっと看護師の初任給と同じくらいでした。

しかも、昇給率もボーナスの掛け率も看護師のほうが良かったので、その差は広がるばかり。。。笑

将来、どちらかを目指すならこういったリアルな生活面も知っておいたほうがいいですよね。

まとめ、悩むならまずは看護師の道に進むのがおすすめ!

長くなりましたが、今回のお悩みの場合、臨床工学技士としてこの仕事がしたい!と明確な理由がないのであれば、まずは看護師の道に進むことをおすすめします。

逆に、人工心肺の操作など、高度な専門知識とスキルをもって特定の分野で働きたいというのであれば、臨床工学技士がおすすめです。
看護師でも同じ業務を出来ないことはないですが、臨床工学技士は業務独占ではないとはいえ、業務範囲はほぼ確立されているので、看護師が人工心肺などを操作する業務につく可能性は限りなく低いといえます。

透析室で働きたいという理由であれば、看護師と臨床工学技士で大きく変わる業務は”機械の管理”の部分くらいですので、看護師として働くほうが給与面からも看護師を目指すことをおすすめします。