価値観や死生観があまりにも違いすぎて職場がイヤになったことってありませんか?
わたしはあります。
特に感じたのが新人ナース時代から日々勉強の若手と言われる経験年数くらいまで。
一般の方からしたら天使と例えられることすらありますが、看護師をはじめとする医療従事者って理想と現実が全然違うことがあるんですよね。
特に経験を積み重ねていくごとに看護が“業務”になってしまう方が多いんです。
私が総合病院で働いていたころ、最も辛かったのが死生観の違いです。
実は医療従事者にもっとも大切なのは死生観とも言われますが、看護学校時代や実習のときに感じる命の尊さを維持し続けるのは難しいという現実があるんですよね。
働いてみると臨床実習では見えなかった本当の臨床を経験することになります。
その過程で浮き彫りになるたくさんの問題。
今回は、死生観の違いで悩んでいた時のお話です。
もくじ
辛い患者様との別れ、担当のこの人なんで嬉しそうなの?
私がいた私立の総合病院ではナースの死生観に対する違和感を普段から感じていました。
特にローテーションが少ない特殊な部署では感覚が鈍っているのかとんでもない会話がちらほら。。。
今回ご紹介するのは透析室の看護師さんたちの会話です。
死生観が鈍るとこんなこと言えちゃうの!?信じられない。
社員食堂で話している看護師さんたち、どうやら透析室で受け持ちの患者様が亡くなられたようです。
話していたのは普段から看護観だの挨拶だの言っている透析室のベテラン看護師さんでした。
「受け持ち減って楽になったわー、よかったー」
「私なんてまだ8人もいるよ。早く減らないかなぁ。」
どう考えても私のような新人看護師には理解できない会話でした。
だって、透析室で受け持ち(患者様)が減るというのは、ほとんどの場合が”亡くなった”ということですから。
聞いていた私は、こんなふうにはなりたくないな。
こころからそう思いました。
過剰な残業やモラハラがひどいわけでは無いので、ブラック企業とまでは言いませんが、患者様目線で言うと隠れブラック病院じゃんって感じですよね。
この施設にいたら私の死生観、看護観がブレてしまうかも・・・。
透析室の看護師さんたちの会話を聞いてドン引きしていた私ですが、死に対して気落ちが軽いのは透析室の看護師さんだけではないことに気づきます。
なんと、看護師長クラスの看護師さんのほぼ全員が似たような会話を口にするのです。
そんな看護師長さんたちに囲まれて働く他のナースたちにも、もちろん感染します。
そもそも、彼女らは私たちのような死生観は持ち合わせていない可能性すら感じました。
ああ、この病院はこういう価値観の人しか残れない病院なんだな。
そう決めてからの私の行動は早かったのかな・・・?
と今なら思います。
看護師を辞めたいのか。この部署が嫌なのか。転職したいのか。
新人看護師だった私にとって、看護学生時代の臨床実習で感じた理想の看護師像と現実とのギャップは想像以上のストレスに感じました。
毎晩悩みましたし、看護師を辞めたいという感情と頑張って看護師になったのだから続けないと行けない。
死生観の違いを感じるにしても、これに慣れる必要があるんじゃないだろうか。
新人の私のほうが感覚的に間違っているんじゃないだろうか。
看護師をやめたいのか、逃げたいだけなのか。
そう考えながら過ごしていました。
はじめに考えたのは”看護師”を辞めたいということ。
看護師というものがこんな人ばっかりなら、私はもう看護師をやめてしまいたい。
失敗をして怒られたり、ヒヤリハットやインシデントを起こして怒られるのは辛いですがまだいいんです。
それは私に原因があって、指導していただいているだけですからね。
でも、患者様のことで、ケアや死生観に対するプロ意識を持っていない看護師さんたちと働くのは本当にイヤだと感じました。
だから、もう看護師という資格を捨ててしまいたいと一時は考えたのですが、正直なところ、看護師というのは女性にしてみればお給料が低くない職種ですから他の仕事というのはできそうになかったんです。
あと、一番致命的に感じたのはビジネスマナーについてです。
学生時代にアルバイトはしていましたけど、将来看護師になるというのは看護学校に入ったときにすでに決まっていたようなものなので、当然ビジネスマナーも見についてないですし、営業やパソコンすら実務で扱えるほど満足に使えません。
看護師を辞めて、一般企業へ進むということは、今以上にキツイかもしれないなって。
それに、小さい頃からの夢だった看護師になれたんだから負けたくない!!って思えたんですよね。
日本看護協会が毎年発表する看護実態調査では
新人看護師(3年過程卒)の平均月収は総額266,041円。(2017年調査結果:発表2018年5月2日)
仮にボーナスが無くても年収320万円近い計算です。
一方、厚生省の統計で性別にみた賃金では新卒も含まれる20歳~24歳の平均月収が202,500円なので一般企業に転職すると年収で80万円近く、ボーナス込ならそれ以上に年収が下がるかもしれませんね。
人事異動で他の部門に移ることを考える。
次に考えたのが部署を移るということ。
私の勤務していた病院は総合病院だったので、たくさんの科があり、外来や病棟だけでなく、オペ室や透析室もありました。
入職時に希望の部署を書くことができたのですが、大抵、こういう何らかのトラブルで部署異動を希望する場合、リハビリ病棟や透析室、オペ室に移動になります。
それに、私が働いている病院ではトラブルを抱えている看護師は“なにか問題のある子”とか“新人で仕事ができない子が飛ばされてきた”みたいなレッテルを貼られるので、むしろ働きにくくなったり、もっと仕事がイヤになりそうです。
ましてや、看護師長クラスの上司や慢性疾患を管理する看護師さんの話を聞いていて辛い思いをしているのですから、面と向かって
「あなた達の感覚に賛同できないので、働きにくいです。」
なんて言えるはずがありませんよね。
新人看護師の辞めたい理由の一番の原因は人間関係。
どういった経緯で人間関係に悩むかは人それぞれだけど、先輩看護師や同僚に相談しにくいこともあるし、院内のことだからなおさら誰にも相談できないですよね。
転職を考えてみる。
経験年数の浅い看護師が転職だなんて。
まだ全然スキルも無いし、業務も覚えきれていない。
いっぱいある看護師の仕事でどれが私に合っているのかもわからないし。。
こんな状態で転職してしまうと、次の職場でもうまくやれるか心配。そんなふうに思ってしまいますよね。
それに、「辞めます」って言う勇気もないし。。
一人で考えているとネガティブにしか思考できなかったので、転職に関しても不安しかありませんでした。
祖父の緊急入院が私の転機に。
悲しくて本当はあまりエピソードにしたくなかったのですが、私なりの看護師としての転機はこの時はと感じます。
県外に住む祖父が真夜中に心疾患により緊急入院してしまったのです。
かろうじて意識はクリアだったようですが、心機能だけでなく全身状態もよくなかったようです。
待機的なオペなら100%見送るような状態での緊急オペとなりました。
年齢も90歳近く、開心術には耐えることができないんじゃないか、と不安でしたがそれ以外に選択肢が無いことは私も家族も理解していたので、そして何より、祖父が頑張ると決めてくれたので祈る思いで送り出しました。もう一度お話がしたい!
私を一番応援してくれていて、看護師試験に受かったときも一番喜んでくれた祖父を思うと辛くて仕方がない気持ちでした。
8時間のオペが終わってICUへ戻ってきた祖父はPCPS(経皮的体外循環)を装着しています。
主治医は家族にしっかりと説明してくれました。
当たり障りのないように、遠回しに。
循環器ナースだった私には手に取るように祖父の状態が把握できました。
PCPSは祖父と家族がお別れをするための時間を少しでも長くしてくれているんだ。
そう感じてしまう自分が情けなく、悲しさと悔しさで何度も泣きました。
機械や薬について私に何度も家族が聞いてくるので、私が看護師であるとバレてしまい、気を使わせるかな?と思ったのですが、病院の看護師さんは”患者の家族”として接してくれました。
オペ後数時間で祖父は目覚めること無く私達に見守られながら亡くなりました。
このときの看護師さんとの出会いが転職のきっかけに。
祖父の入院中、ICUの看護師さんたちに私がナースとして働いていることが知られてしまったのですが、その間、たくさんのお話をしていただきました。
しかも、驚くことに祖父の担当の看護師さんは私の働いている病院の出身だったのです。
まるで祖父が悩んでいる私に奇跡的な出会いを与えてくれたようだったなと今は思います。
彼女のケアや家族への対応はすごく丁寧で、私がナースだと知る前も知った後も何一つ対応は変わりませんでした。
同業者に見られると恥ずかしいね。と言っていましたが、私にはすごく輝いて見えました。
私が理想としていた看護師像は間違いではなく、この病院にはほんとにいるんだ。と思いました。
よく見渡してみると彼女だけでなく、病院全体が医療に真摯に取り組んでいて、ドクターも看護師さんもスタッフ全員が素晴らしい対応とケアをされていました。
思わず私は悩んでいることを打ち明けてしまいました。
すると、
担当看護師さん「私もあの病院で働いていて、人間関係のトラブルで早い時期にやめちゃったけど、違う病院を経験して世界が急に変わったよ。正直、病院によって全然違うね。合わないと感じたならいつでもここにおいでよ笑」
その言葉が私の背中を押しました。
私は常々、自分の職場では家族が入院してほしくない。と思っていましたが、こんな看護師さんたちと働けたならそうは思わないだろうな、自信をもって家族を入院させることができる病院で働きたいな。
そう感じて転職をする決意が固まったのでした。
1年目や2年目は新人だからしばらく辞めないほうがいいの?
結論から言うと、全然そんなことはありません!
でも、入職直後に言われるよく言われるのは、
「新人なんて辞めたところでどこも使ってくれないんだから、最低3年はがんばりなさい!」
こういうフレーズなんですよね。
実際、看護師って外来や病棟など全然業務形態も違う、病棟経験が長くても例えばオペ室に配属されたらまた1から勉強だし、、、って感じで、一通り覚えてからってなると10年以上かかりそうですよね。
そう考えると、私は病院を辞めたいときが辞め時だと思います。
嫌な職場で何年も働いて思考停止してしまうよりも、環境を変えて心機一転。新しい環境で1から学びなおすほうがモチベーションにも自分のためにもなると思いませんか?
日本看護協会が毎年発表する看護実態調査では
看護師の離職率は平均10.9%、新卒の看護師で平均7.6%くらいです。(2017年調査結果:発表2018年5月2日)
毎年、10%前後の人が辞めて新しい人が入ってきていると考えると、5年もすれば、かなりの人数が入れ替わっていることになりそうですね!
お礼奉公との向き合い方。メリットとデメリット。
お礼奉公とは、看護業界によくある奨学金制度です。
病院が学費の一部または全額、あるいは毎月定額を奨学金として負担する代わりに、看護学校を出た後は、奨学金を出してくれた病院で働きます。
大抵の場合、3年間働くことで奨学金の返済が免除になります。
病院にとっては新人看護師を確保できるメリットがあり、学生にとっては、学費の負担プラス就職先を確保できるので、Win-Winの制度とも言えます。
デメリットとしては、最低3年間はその病院で縛られるということです。
病院の労働環境を知らないまま、契約をすることになるので、実はブラックな病院だった場合、3年間は辛い期間になるかもしれませんね。
お礼奉公の期間が終わるまでにやめたい場合はどうするの?
お礼奉公の期間があるのにもかかわらず、どうしても辞めてしまいたい場合は、多くの病院が一括で奨学金の返還を求めてきます。
奨学金を受けると決まった時に契約を交わしますから、契約不履行となり返還の義務は当然あります。
ただ、止む終えない事情での退職や、支払うことがどうしてもできないなど理由がある場合、辞める前に相談すれば、分割で支払いをさせてくれることもあります。
看護師は幸いにもお給料が高い職種ですので、お礼奉公期間にやめてしまったけど奨学金を返しながら働いている看護師も少なくありません。
4年目くらいから中堅クラスくらいの看護師さんが全然いない病院がありますよね。
それは、お礼奉公中、または期間が終わった途端に多くの看護師が辞めているということになります。逆に、若手の看護師さんが頑張っているなぁ。と思える病院は院内の制度がしっかりしていて働きやすい可能性が高いですよ!
転職を考え始めてはじめに行動したこと。
私の場合、まずは勤務圏内の病院の情報収集をしました。
絶対に、祖父の入院時に出会った看護師さんのいるような病院で働きたいと思ったので妥協はしないでおこうと決めました。
しかし、収集を始めたのですが病院の公式サイトだけを見ていても、お給料や年休の数がなんとなくわかるくらいで、何よりも自分が求めている雰囲気があるのか判断できませんでした。
お世話になった看護師さんが働いていた病院は全国系列の病院でしたが、私の希望する圏内には系列病院がないし、、、。
そこで、お世話になったのが転職サイトです。
ありがたいことに、担当の方がついてくださり、病院の情報などを教えていただきながらの病院選びができました。
そこからは割とトントン拍子に話は進みましたが、
絶対に転職で失敗したくないと考えていた私は、必ず面接前に病院見学へ行かせていただくように心がけました。
転職をしてみてわかったこと。
たくさん悩んだ私ですが、看護師を辞めるという選択から、最終的には転職をしてもう一度、理想の看護師として成長できるように頑張ろうと思うことができました。
転職先はまた総合病院を選びました。
350床の中規模で、もともと市立運営だった病院です。
市立運営だったおかげなのか、研修制度や職員に対するケア制度がしっかりと整っており、何より看護師さんの価値観が私の理想に近く、お世話になった看護師さんに負けず劣らずの方ばかりです。
配属されたのはまた循環器内科病棟でした。先輩ナースは厳しく、失敗して怒られることもあります。
専門用語も多く、他職種との連携が以前よりも重要視される環境ですが、まずは経験した環境で働けるよう配慮していただきました。
頻繁に先輩やMEさんが勉強会を開いてくれて、とても親切です。正直、勉強会多いなと思うこともあります。
決して楽な職場では無いな。という感じですが、忙しさすらやり甲斐を感じる良い職場に出会えたと感じます。
私が転職を決めた際に失敗しない転職をまとめましたので、興味のある方は下の記事も読んでみてくださいね!